文化功労者:阪大大学・審良教授 「自然免疫」を解明 (2009/10/28)
27日発表された今年度の文化功労者に、大阪大学免疫学フロンティア研究センター(吹田市)の審良(あきら)静男教授(56)が選ばれた。生物の体が生まれつき備え細菌やウイルスなど外敵の侵入を感知する「自然免疫」の仕組みを解明したことが評価された。審良教授は「大変光栄。今後も免疫学の発展に尽くし、次世代を担う学者の育成に努力したい」と語った。
免疫には大きく分けて、人間から昆虫などまで幅広い生物が持つ「自然免疫」と、脊椎(せきつい)動物だけが持ち、白血球などが外敵を個別に覚えて攻撃する「獲得免疫」がある。従来、研究は獲得免疫が主流で、自然免疫は原始的と考えられ、研究者の関心も高くなかった。
しかし、審良教授らは、90年代から遺伝子改変マウスを使った実験を重ね、自然免疫が病原体を大まかに見分けるのに重要な役割を果たしていることを解明。自然免疫が注目されるきっかけを作った。現在、成果を生かし、ワクチン作成やアレルギー治療の臨床研究が行われている。
大阪大学の免疫学は、元学長の故山村雄一氏、岸本忠三氏から審良教授へと受け継がれた「大阪大学を代表する研究」。審良教授も「それが一番うれしく、感慨深い。『重箱の隅をつつく研究をするな。インパクトのある研究を』と師匠の岸本先生からスタイルを学んだから、ここまで来られた」と笑顔を見せた。
ただ現在、免疫学の人気は必ずしも学生らの間で高くはないという。審良教授は「これまで余裕がなかったが、学生が読んで免疫学をやりたいと思えるような入門書の執筆も手がけたい」と意気込む。今後の目標は「免疫の全貌(ぜんぼう)を解き明かしたい」といい、「生きている間に進歩をどこまで見られるか」と楽しみにしている。
(毎日新聞)