4000万年以上前 霊長類にウイルス…朝長・大阪大学准教授ら解析 (2010/01/07)
馬や犬などの神経疾患の原因になる「ボルナ病ウイルス」がDNAに入りこんだ跡と見られる遺伝子配列を、大阪大学微生物病研究所の朝長(ともなが)啓造准教授らが、人や各種のサルなどで発見した。4000万年以上前に霊長類の共通祖先に感染したとみられ、ウイルスの侵入が、従来考えられていた以上に生物の進化に影響を与えてきた可能性があるという。1月7日付の英科学誌ネイチャーに発表される。
ウイルス由来の遺伝子は人の全遺伝子の8%を占めるとも言われるが、自分の遺伝情報を組み込めるのは、特殊な酵素を持つ「レトロウイルス」というタイプだけと考えられてきた。
朝長准教授らは、ボルナ病ウイルスの遺伝子の一部とよく似た配列が、人間のDNAにも存在することに気づいた。他の動物の遺伝子配列データと照合すると、チンパンジー、ゴリラ、アカゲザル、原始的なサル類にも同様の配列があり、霊長類が様々な種に分かれた約4000万年前より先に組み込まれたらしい。マウスやゾウ、オポッサムなどでは、同様の配列が異なる位置に入っており、感染時期が違うと判断できた。
DNAに侵入できたのは、すでに組み込まれたレトロウイルス由来の酵素を利用したのだろうという。
(読売新聞)